すぐれもの 『机上辞典(全面改訂版)』

●今、『仮名草子集成』の校正を進めているが、使用する漢字の基準が問題になる。平行して進行中の『浅井了意全集』と如儡子の『砕玉抄』とでは、それぞれ、基準が異なる。そのシリーズや作品によって、微妙に異なる基準を作るので面倒になる。現在のように、3つも平行して作業を進行する場合、凡例を切り替え無ければならない。若い頃は分離が明瞭であったが、老化して、やや鈍化している。要注意である。

●約5万5千字の漢字のうち、現在私たちが使用するものは、せいぜい5千字くらいだろう。戦後の漢字簡素化政策で当用漢字が決められ、日常使用する漢字を制限した。今では常用漢字となり、さらに現在、改定常用漢字表が答申され、間もなく告示される。これに従って、国語辞典は一斉に改訂版を発行する。果たして使いやすい辞典はどれだろうか。

●古典の文章を校訂する時、常用漢字人名用漢字は、その新字体を採用するケースが多い。実用国語辞典の『机上辞典』の全面改訂版は、昭和57年(1982)に発行され、約46000語を収録しているが、このうち、一字漢字を約5200字収録、教育漢字・常用漢字人名用漢字・表外漢字を、見出しカッコで区別し、非常用漢字には×、常用漢字で音訓表に読みの無いものには▲、人名用漢字には×○を付けて、それぞれ区別している。しかも、一字漢字の総画索引を付けて、その漢字の音訓の本文が検索できるようになっている。現在も、私は、この辞典に従って本文校訂をしている。

●この全面改訂版は、誠文堂新光社の辞典部のスタッフが3年がかりで仕上げたが、私は、その責任者として、心血をそそいで取り組み、仕上げた。組版は新興印刷、製版は近藤写真製版、印刷は開成印刷、製本は藤沢製本、いずれも一流の技術を誇る。年間20万部という実績は、このような優れたノウハウがあって達成された。

■■『机上辞典(全面改訂版)』
これはデラックス版、私がデザインした。

■このクラスの辞典で、一字漢字5200字収録は立派。300万字の調査結果、異なり字数約4000字のデータに基づく。

■これは便利、一字漢字索引。

■長い歴史を持つ実用国語辞典。

変体仮名一覧。 私が、書家・大島香鳳先生に依頼して、4000字の中から撰んだ。古典研究者でなければ収録しない附録だろう。