紙を超えるか 「電子ブック」

●今日の朝日新聞のGLOBE 第39号は電子ブックを特集している。鈴木・田中両氏が現地取材した力作レポートである。

「次々と登場する電子ブック端末は、より紙に近づくことで存在感を増し始めた。ネットワークと新たなモノづくりがこれを支える。主役は米国と台湾、そして中国。日本勢の影は薄い。」

●台湾最大の製紙会社、永豊余(YFY)がアメリカのマサチューセッツ工科大学の開発した理想の紙、EInkと出合い、提携して新しい電子ブックの「紙」を生産しているという。電子端末、キンドルアイパッドもこの画期的な「紙」の登場で、より一層紙の本をめくる感覚に近づいた、ということらしい。私は、アイパッド発売の時、指で本をめくる映像を見て、驚いた。スライドではなく、「めくる」のである。これは画期的であった。

アメリカのプリンストン大学で、紙の消費量を削減しようと、授業用の資料をデジタル化して取り組んだが、紙の消費量はかえって増えたという。学生はパソコン画面の利用を嫌がった。バックライトの明りが目の負担となり、メモ書きもマーカーも出来ない、というのが原因らしい。次に、アマゾンのキンドルを渡して実験したら、結果は50%も減少したという。

●電子ブックの紙は、より一層、本物の紙に近づき、新しい時代の読書の形態を変えてゆくのであろう。電子ブックが、中国後漢蔡倫が発明し、人類によって洗練進化してきた「紙」を超えることは容易ではないだろうが、今後の知識伝達の方法に、大きな変化をもたらすことは、間違いないだろう。

■■朝日新聞のGLOBE 第39号