仮名草子の写本

●『思文閣古書資料目録』第216号(平成22年2月)に、仮名草子『ひそめ草』の写本が出ていた。伝九条幸家の筆という。全3帖で、表紙は紺の紙に金箔散、金泥の下絵入で、中央題簽の立派な写本。江戸前期写という。公家・九条幸家は、寛文5年(1665)に没している。古書価は157万5千円。

●この作品は、随筆風の仮名草子で、3巻3冊、寛永21年(1644)成立、正保2年(1645)刊行である。このような教訓的な作品を上流階層の人が、丁寧に書写していて、この点、興味深い。当時のベストセラー『可笑記』にも、甲南女子大学には、特異な写本があり、『堪忍弁義抄』にも磐城平藩主・内藤風虎旧蔵の写本がある。版本からの写しか、版本以前の写本か、書籍の受容を考える上でも興味深い。

■■伝九条幸家筆『ひそめ草』(『思文閣古書資料目録』第216号)

■これは版本