畑 尚子 氏の労作 『徳川政権下の大奥と奥女中』

●畑 尚子氏の『徳川政権下の大奥と奥女中』(2009年12月22日、岩波書店発行、9600円+税)が発行された。江戸城大奥に関する労作である。著者によれば、大奥に関する従来の研究は、『旧事諮問録』(明治24年・1891〜)、『千代田城大奥』(明治25年)、『御殿女中』(昭和5年・1930)、『幕末明治女百話』(昭和7年)等があり、史料としては『徳川礼典録』、『徳川緒家系譜』等があるが、大奥を対象としたものは、学術研究とみなされない傾向があったという。

●「おおおく【大奥】江戸城内の、将軍の御台所(みだいどころ=正夫人)・側室やそれに仕える多数の女の住居。▽出入りが自由な男子は将軍だけ。女たちのねたみと敵愾心(てきがいしん)が渦巻く所として、今も比ゆ表現に使う。」(『岩波国語辞典』第7版、2009年11月20日、第1刷)

●このように、とかく、興味本位的に扱われてきたのが、江戸城大奥かも知れない。著者は、そのような対象の研究に、平成11年(1999)に着手されたという。ちょうど10年間の研究成果が本書という事になる。私の研究経験からしても、1つのテーマに取り組んで10年経てば、ほぼ見通しがつくように思われる。畑氏の大奥研究も、そのような経過をたどっているようであるが、この度の著書は、ともすれば、興味本位になりがちな主題を、具体的な史料の調査・考察を通して、幕藩体制の組織の中に位置づけるという、学問的成果をあげたものとしてよいと思う。

●私は、文学研究者であり、歴史分野のことは、十分に理解できないが、この度の畑氏の著書は、そのように高く評価してよいのではないかと思う。私も『井関隆子日記』の研究の折、畑氏の研究には、多くのお教えを頂いたが、今後は、この成果を大いに利用させてもらいたいと思っている。

★本書の詳細目次→http://www.ksskbg.com/sonota/shin.htm

■■畑 尚子氏著『徳川政権下の大奥と奥女中』