欧陽脩の 『秋声賦』

秋分の日も過ぎ、暦の上では、間もなく寒露となる。台風18号の接近で肌寒い日が続いている。秋だなーと思う。唐宋八大家の1人に数えられた欧陽脩が、秋の夜の趣を謳いあげた詩に『秋声賦』がある。詩は「欧陽子方夜読書聞有声・・・」ではじまる。全部で401字。

●「欧陽子夜に方(あた)って書を読むに、声の西南より来る者有るを聞く。悚然として之を聴いて曰く、異しいかな。初め淅瀝として以て■颯たり。」北宋文人・欧陽脩の『秋声賦』の書き出しである。欧陽脩が、秋の夜中に書物を読んでいると、西南の方角から響いてくる物音がする。初めは雨のはらはらと降る音であり、やがて、風のさびしく吹きすさぶ音となり・・・。不審に思って召使に尋ねると、その音は樹の枝の間で鳴っています、と答える。「予曰く、噫■悲しいかな。此れ秋の声なり。」

●秋風の物さびしい音を形容し、秋には万物が凋落することを悲しみ、自然の摂理に従う現象の変化・推移の厳しさと人間生活との関係を叙し、人生のうつろいやすいことを嘆いた賦である。

●我が家の床の間には、『秋聲賦』の軸が掛けられている。その末に「録欧陽脩秋声賦陽湖承春先於墨田書荘」とあり、掛軸の題簽に「秋聲賦小楷軸 甲申十一月春先自題(承)」とある。これは、昭和女子大学の書の講師、承春先先生が、私の定年退職を祝して、秋の生まれの、私のために真心をこめて書いて下さったものである。私の宝物である。承先生はお元気で御活躍であろうか。

■■承春先先生 書 欧陽脩の 『秋声賦』