位牌の奪魂法要

●山形の斎藤さんから電話があり、これから御先祖様の位牌の奪魂法要をして、仏像文化財修復工房へ修復をお願いします、というお知らせを頂いた。「武心士峯居士 延宝二年甲寅 三月八日」と如儡子法名・没日が記され、続いて「玄光妙宗大姉 六日」と如儡子・斎藤親盛の妻の法名が書き込まれた第1位牌である。

●昭和62年8月7日、私はこの貴重な位牌を拝見することができた。研究者としては、野間光辰先生に続いて2人目である。20余年経過した昨年拝見した時、全体的に劣化が伺えた。斎藤さんの依頼で、諸方面に打診して、仏像文化財修復工房の松岡誠一氏にめぐり合った。それが、ようやく、修復依頼となったわけである。修復完了までには、おそらく数ヶ月を要するものと思われるが、貴重な位牌が修復され、さらに後世へ伝わることは、有難いことである。

●【奪魂】一切の理性や自制を失う状態。神秘的・宗教的体験の境地。・・・形骸を離脱し、我を忘れて神に還没した境地。忘我。消魂。要するに、位牌に含まれている人々の魂を一時的に取り去って、物体としての位牌の状態にして、破損・損傷・汚れなどを取り除くという事であろう。

■■斎藤家、第1位牌 平成21年2月撮影