『可笑記評判』初校 了

●遅れに遅れていた、『浅井了意全集』第3巻の『可笑記評判』の初校が、ようやく終わった。原稿作成段階でトラブルが発生し、巻1〜巻4が消えてしまった。1度書いたものを再び書くのは実にシンドイ作業であった。全10巻、1400枚の原稿が脱稿した時には、もう初校が半分出ていた。これから、解説執筆と再校の校正があるが、一段落である。

●それにしても、如儡子は、よく、280段もの、随筆的、批評的、物語的、実録的な作品を書き残したものである。おそらく、執筆中には、自分の文章が、こんなにも多くの人々に読まれるとは、思わなかったろう。しかも、仮名草子作者の中でも、博識で知られる浅井了意に、一段一段、解説され、批判され、訂正され、言葉尻をあげつらわれるとは、それこそ、想像しなかったろうと思われる。

●それにしても、浅井了意は、この大部な著作に、よく、ここまで、真正面から取り組んで、同時代の武士の浪人の言説に対して、いちいち反応したものである。私は、近世初期の大啓蒙期に活躍した、二人の作者の情熱に対して、常に敬意をささげながら、この作業を続けてきてた。人間の文化とは、そのようなものであろう。この、尊い精神的営みを軽視することは許されないだろう。

■■『可笑記評判』万治3年(1660)2月刊 FUAKI蔵

寛永13年(1636)成立、江城之旅泊身(如儡子・斎藤親盛)の 奥書

寛永14年成立、万治3年2月刊行 浅井了意の 奥書

水子 は 浅井了意のペネーム