活用され始めた『井関隆子日記』

●最近、幕末の旗本の主婦の書き残した日記『井関隆子日記』が諸方面で活用され始めた。歓迎すべき事だと思う。私が、この日記を脚注付きの全3冊で勉誠社から出したのは、昭和53年(1978)で、30年前である。長い間、世間から無視されていたが、2004年に『井関隆子の研究』を和泉書院から出し、さらに、2007年に文春新書『旗本夫人が見た江戸のたそがれ』を出したことが関係しているものと思う。

ドナルド・キーン氏の『百代の過客』(朝日新聞社)や渡辺京二氏の『江戸という幻景』(弦書房)は早く取り上げてくれたものであるが、その後の主なものを列挙すると、次の通りである。

長辻象平氏『江戸の釣り』2003年、平凡社新書
野口武彦氏『大江戸曲者列伝』2006年、新潮新書
○畑尚子氏『幕末の大奥』2007年、岩波新書
氏家幹人氏『江戸の病』2009年、講談社選書メチエ
永井義男氏『江戸の性の不祥事』2009年、学研新書

■■永井義男氏『江戸の性の不祥事』2009年6月5日、学習研究社発行

宮城県視覚障害者情報センターの、21年6月11日付け〔録音図書〕の中に『旗本夫人が見た江戸のたそがれ』が追加された。これも有り難いことである。