老いを 共に生きる

●今日の朝日新聞を見たら、65歳以上の事故は、03〜07年の全国の協力病院の調査結果として、6569件のうちで発生場所が家庭内だったのは4158件で、約6割だという。特に居間や台所が多いらしい。73歳になった私の経験からも納得である。ちょっと高い所の本を取ろうとして、よくヨロケる。だから、散歩も、真剣に行わないと事故の原因になる。

●3日ほど前、83歳になる姉が台所で物を取ろうとして右腕を骨折したと電話があった。今は義兄の介護でリハビリ中の由。
●この年齢になると、いずこを見回しても、老夫婦2人の生活が多い。関西のK先生は、87歳、奥様が85歳。先日、2人で散歩していて、老婦人の運転する車に奥様が撥ねられて緊急入院、集中治療室で治療した甲斐があって、回復はされたが、現在もリハビリ生活が続いている。先生が毎日、介護しておられる。
●88歳を過ぎたKI先生は独身ゆえ、老人ホームで車椅子生活。しかし、施設の方々がとてもよく介護してくれるので、とてもお元気である。私は、近いので、時々伺って、研究会の近況報告などを申し上げている。先生は、御研究もやるだけのことはしたので、現状に一応は満足され、老いの人間の探求を続けておられる。いずれは、何か書きたいと、ノートを取っておられる。
●S先生は79歳、奥様は77歳。2年ほど前、奥様が入院され、先生が自炊生活をしながら病院へ通った。現在は、御自宅で、お二人が協力しあって生活しておられる。
●KS先生は、やはり80歳に近いと思うが、遠出は無理で、自宅近くを散歩されるのがせいぜい、と言われる。幸い奥様はお元気ゆえ、助けられる事が多いらしい。
●大先輩のO先生は、郵便を出しても、返信無く、電話しても、お留守。奥様は、数年前にガンになり、先生は、全てを捨てて看病され、全国の病院を廻って尽くされた。今は、お嬢さんが先生を介護されているのではないかと推測するほかは無い。
●敬愛する現代詩人・S氏は先年、力作詩集2冊を出版されて、第24回現代詩人賞の候補作9冊の中にノミネートされた。御本人は充実した日々を送っておられるが、御高齢の御主人が、下咽頭ガンで3度も手術され、今は話す事が出来ず、筆談の毎日であるという。御主人の快復を念じて、各地の温泉を廻って治療に尽くしておられる。
●友達のT君は、御本人は元気で剣道に励んでおられるが、奥様が少し体調優れず、いつも気遣っている。お子さんと3人暮らしであるにしても、お子さんにはお子さんの生き方があり、彼の思い遣りには頭の下がる。
●教え子のTKさんは、お母さんが、寝室で転んで骨折し、長いリハビリを続けた。こちらは快方に向かっていたが、急に脳梗塞を起こし、緊急入院され、集中治療室で処置。意識も戻り、快方には向かっているが、父親と2人で、毎日の介護。彼女は2時間の睡眠が続くこともあるという。若いのに、本当に頭が下がる。
●老いを自覚し、お互いに助け合い、生きてゆく事が求められている。慈愛の老後をひしひしと思う。

■佐野千穂子 詩集 『ゆきのよの虹』『消えて候』
2005年10月17日、花神社発行、定価、各2000円+税