古典を寝転んで読む

●私は、今、大学時代、卒業後の研究の思い出を整理している。重友先生の御指導を頂いて進めてきたが、思い出せば、無知のゆえ、何度、恥をかいたことか。恥ずかしくて、恥ずかしくて、穴があったら、そこにもぐって隠れたいことが多かった。

●確か、昭和37年6月のことだったと記憶している。法政大学の大学院修了者で運営していた、日本文学研究会の月例会に初めて参加させてもらった。午前中は演習、午後は会員の研究発表で、丸一日かけての例会であった。豊島園の重友先生の御自宅で行われていた。重友先生から、先輩の常任委員の先生方に紹介して頂いて、演習に入った。例会案内で『徒然草』00段だと知らされていた。報告者の報告が終り、討論に移る。各自が意見を述べて、一通り済んだところで、司会者が深沢さん、何か御意見がありますか? と言われた。

●私は、意気込んで調査もして、会に臨んだので、調査結果のノートを見ながら、トウトウと意見を申し上げた。それまで、耳を済ませて聞いておられた、重友先生が、少し大きな声で、そして、強い口調で、「キミは古典を寝転んで読んでいる。その態度では、作品の中には入れませんッ! 注意したまえッ」と一喝されてしまった。恥ずかしいことであったが、有難い、御注意であった。

■日本文学研究会の機関誌『文学研究』創刊号 昭和28年7月発行