金星 太陽面通過

●昨日、午前7時27分頃より、金星が太陽の前を横切った。地球・金星・太陽が1直線に並んだ時に起きる現象である。次回は105年後だという。また、全国の人々が専用の眼鏡を掛けて見ていた。私は見なかった。

●明治7年(1874)には、日本やアジア地域で金星の太陽面通過の全過程が観測できた。アメリカ、フランス、メキシコが日本に観測隊を派遣し、横浜、長崎、神戸などで観測を行ったという。これが国内での最初の「金星の太陽面通過」観測であった。メキシコの観測隊が横浜市の山手と野毛山で観測したことを記念した碑が、横浜市中区山手町のフェリス女学院中学校・高等学校に建てられた。観測の目的は、金星が太陽面を通過する時間を地球上の異なった地点から計測することによって、太陽と地球の距離を求めるためだったという。

●ところで、江戸末期の井関隆子の日記では、この天体現象について、こんなことを言っている。

最近、オランダ学者のいうことを聞くに、天地のことを追究して、地球の大きさ、深さはこれ程と定め、地球の1周もどれ位と定め、その他、月・太陽の高さ、大きさなども全て数量を推計して、宇宙全体を見極めたように言っている。しかし、これらを実際に計測したのではないのであるから、

「全て、かかる事どもは、げにさることにもやあらむ、いかならむ事にかなど、おほよそに思はん迄は、さてあるべし。実に然あるべきことはり也と、おしきはめ言ふは、いとかたくなしき事になむ。」

と言って、この天地の事を全て知るためには、この天地を離れ出て、外に立って、そこから見なければ事実は解らないだろう、家のことでも、一歩外へ出て、眺めれば、解ることもある、それと同じであろう、と言っている。なるほど、なるほど。

■6月6日の 金星 太陽面通過
左から午前7時27分、午前8時、以後毎正時、右端は午後1時29分=6日、岡山市東区、飯塚晋一氏撮影

横浜市中区山手町に建てられた記念碑

■『井関隆子日記』天保11年4月9日