合宿研修短歌会

若宮貞次先生が編集兼発行人である、短歌雑誌『あかね』第28巻第5号が発行された。巻頭に「平成24年度あかね夏の合宿研修短歌会 平成24年8月25日 水月ホテル鷗外荘」の写真が掲載されている。また、その折の参加者の作品も収録されている。このようにして、歌の道に精進する人々が、研鑽を重ねて、日々の生活を一首の中に盛り込んでおられるのだと、初めて教えられた。

●五味保義先生の遺歌集に続いて、若宮先生の作品が掲載されている。
 ささやかな冊子づくりの日々にしてピアノに寄らむいとまのあらず
 新刊の「あかね」をくばり街めぐる行く先々の歌のわが友
 リュック背に門を出で発つ月々の甲府歌会は二十年を超ゆ
 「あかね」誌のゲラが届かむやすらかに朝寝してゐるわけにはゆくまい
 八十代半ばとなりし貞次の眉毛は黒し髪はふさふさ
 レジ袋下げ店を出づほしいまま選び食する日々となりたる
 唐国に逝きにし阿倍仲麻呂は二国語使用の先駆者ならむ

●若宮先生の日常が、つつみかくさず詠じられている。まさに「生活に即した真情の歌」である。できたての『あかね』を歌の仲間に届ける先生の嬉々とした様子。進行中の『あかね』の校正が出てきては、朝寝もしていられない、ちょっと辛いけれど、張りのある日々。歌の材料を背に甲府へ出掛ける、思えば20年間か、よく継続したものだ。八十代の半ばになったのに、眉毛は黒く、髪はふさふさしている、まだまだ、やれるなあ。若宮先生の尽きることの無い芸術意欲に、ひしひしと尊敬の念が湧いてくる。

●17歳の時、遣唐使として中国へわたった、阿倍仲麻呂に寄せる連作の9首に関する分析は、自分の作品についての評価だけに、至難の研究だと思った。私は、平成6年に2週間ほど中国旅行をしたが、阿倍仲麻呂の記念碑の建つ興慶宮公園へも行った。若宮先生の「長安の月」に寄せる連作を拝読して、仲麻呂への思いを新たにしたことである。

■短歌雑誌『あかね』第28巻第5号

■平成24年度あかね夏の合宿研修短歌会

阿倍仲麻呂記念碑